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【レポート】WORLD Learning Program ―Presented by 教授の本棚―
「教授の本棚」と市川力さん(りきさん)「Feel度Walk」とのコラボレーションにより、WORLD Learning Programはデザインされています。
2025年8月2日(土)、水都国際中学校・高等学校を舞台に「WORLD Learning Program Presented by 教授の本棚」を開催しました。
本プログラムは、本屋アルゼンチン/センコー/Polaris/水都国際高校が共同で主催し、約40名にのぼる参加者が多様なエリア(東京、広島、滋賀)から大阪に集まりました。「教授の本棚」と市川力さん(りきさん)の「Feel度Walk」とのコラボレーションにより、WORLD Learning Programはデザインされています。
当日の写真とともに開催レポートをお届けします。
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▶︎そもそもWORLD Learning Programとは?
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プログラムは「W-O-R-L-D」の5ステップを軸に構成しています。5つのステップを通じて、探求以前にひとりひとりにすでに持っている・眠っている「面白がる力」を呼び起こす新しい試みです。
自分一人だけが持つ独自の内的世界と、果てしなく広がる外的世界。その二つを同時に身体で味わい、自分に眠るおもしろがる力(=探求の種)に気づく時間にしたい思いを込めて、WORLD(=世界)という言葉を使用しています。
Walk(あるく):学校内外を歩き、身体の感覚を取り戻します。
Observe(ながめる):気になったものを観察・記録し、「問いの芽」を見出します。
Read(よむ):教授の本棚やテキストから直感的に本を手に取り、“知との出会い”として読みます。
Lean(ゆだねる):感じた発見を他者と共有し、探究のプロセスを開きます。
Draw(えがく):気づきや問いをビジュアルに表現し、描きながら思考を形にします。
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▶︎当日の流れ
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▶︎Walk & Observe
最初のアクティビティはFeel度Walkです。校舎内外を自由に歩き、「なんとなく」気になったものを写真におさめてもらいます。もちろん、最初からいきなりあるくわけではありません。りきさんからの「なんとなく」「歩く」面白さを存分に語ってもらいました。ルソー、夏目漱石をはじめ哲学者や作家はみんな昔から歩いていた。まずは凝り固まった体と頭を歩きほぐすところからスタートです。
スマホで「なんとなく」気になったものをどんどん撮影していきます。普段は見過ごす落書きや何気ない傘立て。
次は、その写真に撮ったものをじっくり観察しスケッチしてみる。クレヨンやペンでなんども描いていくと、そこで何が起こっているのか?どんな影が、どんな細部が見え隠れするのか?ひとりひとりの観察力がじっくり浮かび上がってくる時間でした。
例えば、ペットボトルのキャップのスケッチ。鮮やかな色で描き出してくれました。まるでここから違う物語が始まりそう。それをひとりひとりの作品をみんなでシェアしていきます。たった20分の中でも、全然違う世界を切り取り、味わえる自分たちの感受性の豊かさをまるで確かめ合うような時間でした。
▶︎Read&Lean:教授の本棚との遭遇
そして、次に登場したのは、廃棄予定だった「教授の本棚」。数十年かけて積み上げられた知の堆積が、一冊一冊の本として並びました。これも単純に箱がそこにあるだけではなく、センコーさんの協力によって梱包・配送をしてくれています。オンラインの電子書籍では味わえない、物理的な本を全身で味わえるリアルの醍醐味です。
ここで大切にしたのは偶然・直観・そして必然というキーワードです。自分で並んでいるダンボールから一箱選びます。そして取り出す。どんな本が入っているかわからないダンボールから大量の本を取り出すときのワクワク感が体育館に充満しました。中身には飛びつかない。まずはとにかく味わう。その場に委ねることによって普段どれだけ目的的に生きているのか、焦って生きているのかが突きつけられます。
続いて、その本から一文を抜き出し、模造紙に貼り付けました。そこには「なぜか惹かれる言葉」「自分の問いと響く文章」が集まり始めました。そして、違う本を手に取った人同士が、自分に引っかかった言葉を交換しました。
「正解を探す読書」ではなく、「違和感や面白さを共有する読書」の風景が広がりました。委ねて味わった時間と共読の往復運動によって、知が立体的に響き合っていく瞬間です。はじめて出会った人同士が、なぜか相手のことは全く知らなくても一緒にいれる。話が自然と湧いてくる。本には力があります。人と人をつなぐってよく表現されますが、わたしたちの目の前で起こっていた感覚です。
▶︎Draw:描きながら問いを再構成
最後は「Draw」です。知の跳躍=アブダクションへの挑戦。抜き出した複数の言葉を並べ、「アブダクション(跳躍思考)」に挑戦。論理的な要約ではなく、言葉の奥に潜む気配を読み取り、自分なりのセンテンスを紡ぎ出す試みです。
共通点を探すのではなく、いろんな言葉を並べてくる中でじぶんたちのなかでどんな言葉や情景が湧いてくるか。そこにオリジナリティが宿ります。いま、ここにいる自分だけしか紡げない知の源泉。それを「俳句」でまとめてみようという「無茶振り」をさせてもらいました。
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とっても大層に言うと、現代の情報過多の社会において、「教授の本棚」が示したのは、知の生態系を保つ学びの姿です。廃棄されるはずの本棚が「知の堆積層=知層」として再生し、そこから無数の問いが芽吹く――この循環そのものが、知的越境の象徴でした。
「WORLD Learning Program」は、世界をおもしろがる感性を取り戻し、他者と共有する場。参加者は一冊の本、一枚の紙、一つの線から「自分の世界」を紡ぎ出し、同時に他者と響き合う経験を届けます。
興味がある方はいつでも連絡ください。